2005年(平成17年)3月1日ダイヤ改正での廃止が発表された特急「いそかぜ号」。
 残念ながら需要が極めて低かったことが廃止の理由だろう。

 例えば「いそかぜ号」の通る観光都市萩に向かうにしても、北九州近辺からならばマイカーで十分日帰りが可能な距離である。また遠来の客は、航空機か新幹線で山口入りし、そこからはバスかレンタカーの利用が主な流れだろう。
 そもそも観光需要は週末や休日に集中するもので、平日の状況は推してしるべしである。
 2001年(平成13年)7月7日ダイヤ改正で、益田以東の運行が廃止された時点に、近い将来「いそかぜ号」自体が廃止されることを予感した方も多かったと思う。
 その1
 ・・・と酷評する自分が、わざわざ「お名残乗車」におもむいたのは、「まつかぜ」から脈々と続く特急列車の系譜にピリオドが打たれるからだ。
 「いそかぜ」の廃止で、益田以西の山陰本線からは特急列車が消える。同区間が名ばかりの本線の様相となるのも、「いそかぜ」の乗車を思い立った理由の一つである。
 2005年1月27日木曜日の山陰本線益田駅。
 特急「いそかぜ」は、ここ益田駅と北九州の要衝小倉駅を結ぶ典型的なローカル特急列車だ。
 先述の益田以東廃止以降は、その部分を特急「スーパーまつかぜ」との接続で補完している。
 世が世ならば、ひたすら山陰本線を行く「いそかぜ」と、山口線経由の「おき」が併結運転を行い、当駅で解結が行われたことだろう。
 待合室には、一見して廃止前のお名残乗車が目当てと思われる方が目立った。
 最近の「いそかぜ」の客層は、僕と同類の彼らが大半を占めていると考えて間違いない。

 側線でアイドリングを続ける「いそかぜ」編成を近くで眺めるべく、改札口で「萩・秋芳・津和野周遊きっぷ」のゾーン券を提示した。
 発車直前まで入場不可なら諦めたが、あっさり許可され跨線橋を渡った。
「いそかぜ号」 プロフィール
  運行区間  山陰本線・益田−鹿児島本線・小倉
  運行距離  174.6km
  所要時間  下り:2時間54分  上り:2時間55分
  表定速度  下り:60.2km/h  上り:59.9km/h
 国鉄色のキハ181系3両編成は、色あせてはいても魅力は衰えを知らない。
 機械室側面のルーバー。中間車の屋根上に搭載されたラジエターが特徴の機能美もそうだが、やはりこの塗装デザインは心の琴線に触れる。
 一昨年NHKの大河ドラマ「武蔵」に因むラッピングが車体側面に施された。そのままだったら興をそぐな・・・と危惧してきたが、オリジナルの姿に戻されており、ほっとした。
 14:25。列車は転線のため一旦松江方面に進み、2番ホームに入線した。
 折り戸式の扉がぱたりと開いたところで早速乗車。余裕で海側の一角を確保できるのは、JRとしてはありがたくないことである。

 ホームの売店は3年ほど前に当駅で乗り換えた際は営業していたが、いつからか畳んでしまったようだ。
 食料の調達は駅本屋の売店でとなる。ちなみに「いそかぜ」は車内販売の営業は無い。
 14:42に鳥取からの特急「スーパーまつかぜ3号」が到着した。慌しく乗り換え、席を確保したところでカメラを手に走る姿が目立った。